『アーレンシンドローム:「色を通して読む」光の感受性障害の理解と対応』 ヘレン・アーレン著/熊谷恵子ほか訳
ヘレン・アーレンに会ったのは,今から8年ほど前。カナダのバンフという氷河のある町で開かれたディスレクシア学会でのことでした。お城のようなホテルで開かれた学会には北米およびヨーロッパからディスレクシアの専門家たちが集まり,ディスレクシア児童生徒に対して,どういう指導がなされるべきか喧々諤々話し合いました。私はある学者のインタビューをするために,彼を追いかけてそこまで行ったのですが,その時に紹介されたのがヘレンでした。
よく,読みが苦手な子どもにはクリアファイルのような,色のついたセロファン様のものを乗せてみることを薦める記載がありますが(私も本でさんざん紹介しました),世界で最初にそのことを提案したのがヘレンだったのです。オクスフォード大のシュタイン教授らも黄色や青の色を乗せると効果があることを証明していますが,ヘレンは子どもによって色が異なることを訴えています。
本書は,そのヘレンの取り組みを紹介した貴重な一冊。これですべて解決するわけではありませんが,発達障害にかかわるすべての人は知っておきたい情報の一つだと私は考えます。(金子書房・3,675円税込)
『子ども若者育成支援推進法』というのは、安倍内閣で開催された教育再生会議で、門川大作京都市教育長(現・市長)と私が繰り返し提案し、虐待や引きこもり、非行など法とシステムのニッチに落ち込み社会不適応などを起こしてしまう子ども若者を1人でも減らすことを目的として作った法律です。同法の最大のポイントは第一章第二条六項「教育、福祉、保健、医療、矯正、更生保護、雇用その他の各関連分野における知見を総合して行うこと」とある点。つまり、長年の弊害である教育なら教育、福祉なら福祉、医療なら医療と縦割りな行政制度の壁を取り払い、教育から矯正・更生保護(つまり少年院など)、雇用まで横の連携強化を法で明文化することで、出生から就労までを見据えて、子どもが生まれた家庭や育つ環境などに左右されず、国、および地方公共団体が責任を持って1人1人の子どもの健全な成長発達権や教育権を保障することを目指しました。
同法に基づいたシステム構築は京都市でも行っていますし、少しずつ全国にも広がり始めました。本書はそういったシステムがどうやって構築されていったかについてまとめてあります。行政や教育、施設など指導・支援現場の方々にぜひ!
(ジアース教育新社・1,890円)