刺激のある環境で育つと、記憶力や学習能力が向上するとされるが、その時に脳で起きる変化を東京大学の廣川信隆特任教授らがマウス実験で明らかにした。神経細胞の中で分子の運び役をするたんぱく質が増えて、神経細胞のつなぎ目「シナプス」の形成を促していた。2月23日付の米科学誌「ニューロン」で発表した。
廣川さんらは、おもちゃや遊具を置いて刺激の多い環境にした箱と、何も置かない箱でそれぞれマウスを飼育。記憶力や学習能力をみるため、マウスをプールで繰り返し泳がせ、島にたどり着くまでの時間を調べたところ、刺激のある環境で育った方が回を重ねるほどより早くたどり着いた。
この2種類のマウスの脳の変化を調べると、刺激の多い環境で育ったマウスは、神経細胞間の情報伝達に欠かせない物質を輸送する「KIF1A」というたんぱく質が増え、働きも活発になり、シナプスの量が増えていた。遺伝子操作によってKIF1Aを少なくしたマウスは、刺激の多い環境で育てても、学習能力の向上は見られなかった。
廣川さんは「KIF1Aは人間にもあり、機能を増強できれば、記憶や学習障害を改善できる」と話す。
出典:朝日新聞デジタル版